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2010年11月15日 (月)

映画「素晴らしき日曜日」

「素晴らしき日曜日」 黒澤明監督
10月24日(日)  東京芸術センター・シネマブルースタジオにて鑑賞

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終戦からまだ2年ほどしか経っていない1947年(昭和22年)の作品。2人合わせて35円しか持たない恋人たちのある日曜日の風景を描いています。

男は女に現在の自分の境遇がいかに不幸なのかを愚痴り、女はそんな男を励ましながら、きっと未来は明るいと説きますが、実際に2人が遭遇する現実は辛いものばかりです。

この作品で描かれるのは昭和22年のリアルな日本、そして東京です。この時点での日本は戦争に打ちのめされて貧困が当たり前です。闇商売などのずる賢さで儲けた長者と一般市民の間には猛烈な貧富の差があり、それは市井を生きる人たちの気持ちを歪めています。そんな人間性の欠如から起こる災難が恋人たちに容赦なく降り注ぎます。

リアルな昭和22年ですから主人公のカップルも、監督の黒澤でさえも、その後の日本が歩む道を知る由もありません。貧しさがいつまで続くのかもわかりませんし、当時はまだアメリカによる占領国だったわけですから、日本が再独立できるかどうかも未知数です。そして、スクリーンに映し出されるのは焼け跡だらけの東京です。

そんな時代背景を踏まえて本作を見ていると、彼らの貧困に対する嘆きはめちゃくちゃリアルだということがわかります。グズグズと愚痴を言い続けるのだって許さざるを得ないと思えてきます。

でも僕たちは知っています。日本は立ち直ります。朝鮮戦争の特需で産業は発達し、その後の高度経済成長期を経てGDPで世界2位に躍り出たりします。それを知っているからこそ、この映画の恋人たちには負けてほしくない。恋人たちにずる賢い人間だけが成功する世の中を受け入れることをしてほしくない。そんな風に思いながら見ていました。

黒澤監督は最後の最後にヒロインに「貧しい恋人たちが美しい夢が描けるように励ましてください」と言わせ、そして観客に拍手を求めます。未来を知っている現代の観客からなら拍手も起きましょうが、リアルな昭和22年に拍手は起きないでしょうし実際に起きなかったといいます。でも黒澤監督がここで示した「貧しい恋人たちが美しい夢が描けるように励ましてください」という気持ちは僕には十分過ぎるくらい伝わりました。

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