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2010年10月15日 (金)

映画「瞳の奥の秘密」

「瞳の奥の秘密」 ファン・ホセ・カンパネラ監督
10月1日(金) 映画サービスデーのため1000円で鑑賞。

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アルゼンチンのブエノスアイレスを舞台にした作品。裁判所をリタイアした主人公ベンハミンは25年前に起こった殺人事件を小説にまとめようと過去を回想しはじめます。過去と現在を行き来しながら物語は進行していくのですが、終盤まで物語の中軸をなすのは25年前の過去です。その回想の中に犯人探しのミステリーと主人公と女上司イレーネとのロマンスが描かれます。

※今回はここからもういきなりネタバレです。まだ見ていない人は注意してください。

25年前の事件というのは新婚夫婦の妻が何者かに暴行され殺されたというものです。ベンハミンとイレーネは一度は犯人を逮捕しますが、政治的な理由で犯人は釈放されてしまいます。この辺のアルゼンチンの政情は後から勉強しましたが、ここでは割愛。妻を溺愛していた被害者の夫は嘆き悲しみます。さらに、犯人は逆に政府に雇われるようになり、自分を逮捕したベンハミンの命を狙います。ベンハミンは命を守るためにブエノスアイレスを離れざるを得なくなるのです。そしてそれはロマンスにさえ発展しなかったけれど思いは通じ合っていた上司のイレーネとの別れにもなります。そして25年後、この事件を小説にまとめようとするベンハミン、となるわけです。

物語の中心が現在進行形に戻った終盤、そして驚きの結末を見て、僕は「過去は現在に繋がっている」ということを痛烈に感じました。過去を断ち切った気でいても深層心理に思いが残っている限り、過去は生き続けるんです。

小説を書き終えたベンハミンは、作品を読んでもらおうと被害者の夫の元を訪れます。25年前は髪の毛も豊富でそれなりに二枚目だった夫はすっかり頭は禿げ上がり、初老の男になっていました。家に招き入れられたベンハミンが見たのは、部屋に飾られた25年前の妻の写真の数々です。夫は過去を断ち切ることができず25年間、殺された妻を愛しながら生きてきたというわけです。

この夫とベンハミンは同じです。ベンハミンはかつての上司イレーネを愛し続けています。過去を断ち切れないでいます。過去が現在につながっています(本当はもう一人過去が現在につながっている人物がいるのですが、結末に触れるので割愛)。ただ、被害者の夫よりベンハミンが幸福なのは、それが絶望ではないからです。被害者の夫の愛には絶望しかありません。

死刑制度のことや、アルゼンチンの政情、ワンシーンワンカットのこんなの見たことないスタジアムでの犯人追跡シーン、Aを打てないタイプライターの粋な演出など書ききれなかったことも多かったですが、今年見て良かった映画のひとつです。

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