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2010年9月

2010年9月27日 (月)

映画「どん底」

「どん底」 黒澤明監督
9月26日(日) シネマブルースタジオにて鑑賞

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1957年という古い作品の上に、黒澤明監督のフィルモグラフィーの中でも語られることが少ない映画ですが、とても面白かった。というかこの特集上映で見た4本の作品のなかではダントツに面白かったです。

今回はゴーリキーの原作を読んでから鑑賞しました。原作を読んだ時点ではこれを映画化してもたいして面白くならないんじゃないかなと思っていました。木賃宿の室内とその中庭だけで物語が進行していくので、話に変化がつけづらいのではと思ったからです。ですが、予想は大きく裏切られました。舞台を江戸時代の最下層の人が暮らすドミトリーに移し、住人の服装をボロボロの着物にすると、原作以上の「どん底」感が伝わってきました。さらに寒さ、雨、日向ぼっこをするような陽気に嵐と、気候の変化を取り入れることでシーンに変化が出て物語に彩りが出ていました。

とにかく俳優たちの演技が素晴らしく、というかさ、あんな異形の俳優たちは今はどこを探してもいないでしょう。ラストではそんな俳優たちが馬鹿囃子で歌い踊ります。ビートやリズムは茶碗や人の声で紡がれていて楽器は一切使われていません。それでもちゃんと曲の伴奏になっています。それは紛れもなくヒューマンビートボックス、間違いなくヒップホップの手法です。このシーンは本当に素晴らしくて、それまでの長回しとは打って変わって、人物のアップを短いカットでつないでいくことで画面が馬鹿囃子のテンポに乗ってスウィングしていくのです。バカバカしくて楽しくて、悲しくて。そして唐突に訪れるラストシーン。これがビックリ。俳優の顔のアップ、一言の決め台詞、ヒューという笛の音と同時に現れる「終」の文字。格好イイ、痺れた〜。

今回もプリントの状態はすごくよくて、この特集上映を主催している方々の努力に頭が下がります。来週は「わが青春に悔なし」です。北千住の東京芸術センターでの特集上映「黒澤明 生誕100年記念 23作品一挙上映」2月まで続きますのでみなさんもぜひ足を運んでみては。

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2010年9月21日 (火)

映画「蜘蛛巣城」

「蜘蛛巣城」 黒澤明監督
9月19日(日)シネマブルースタジオにて1000円で鑑賞

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地元北千住の東京芸術センターでの特集上映「黒澤明 生誕100年記念 23作品一挙上映」にここのところ毎週通っています。それはそれは楽しい映画体験の連続なのですが、いかんせん客の入りが悪い。もっと宣伝しなきゃもったいない。黒澤映画をこんなでかいスクリーンで見るという体験は、今後、なかなかできないと思うのです。

で、1957年(昭和32年)の「蜘蛛巣城」です。大昔に見たときはプリントが最悪で雨がザーザー降ってる上に音声も聞こえづらく、カッタルイ映画だな〜程度の感想でした。それが、今回の上映のプリントは本当に綺麗でため息が出てしまいました。こう書くと馬鹿じゃね〜と思われるかもしれませんが、三船敏郎と千秋実が褒美の刀を受け取るシーンのクローズアップなんかはモノクロ映画なのにカラー映画を見ているような錯覚を覚えたくらいです。

ただ音声は相変わらずイマイチで、特に三船敏郎の台詞は半分以上何を喋っているのか理解できませんでした。

しかしですね、原作がシェイクスピアの「マクベス」ということで、「乱」の「リア王」に続いて原作を読んでから鑑賞に臨んだのです。そうしたらやっぱりこれが大正解。あらかじめストーリーが頭に入っているから三船敏郎の台詞があんまり理解できなくても物語から引き離されることがありませんでした。もうひとつは「乱」の時と同じように黒澤監督がマクベスのをどのように翻案するのかを見るという楽しみも得られました。

映画は冒頭の霧の中から蜘蛛巣城が少しずつ浮かび上がってくる映像に始まりどのシーンもうっとりするほどの美しさ。アート映画のような盛り上がりにかける作品になるかと思いきや、クライマックスでの有名な弓矢のシーンで僕たち観客は、やっぱり黒澤監督は娯楽映画の人なんだと再認識できるのです。

大スクリーンでメチャクチャ綺麗なプリントで「蜘蛛巣城」を見るチャンスはそんなにないですよね。本当に得がたい体験をしました。次はゴーリキー原作の「どん底」です。もちろん岩波文庫の原作を買いましたから読んでから見るのです。わくわく。

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2010年9月17日 (金)

映画「キック・アス」

「キック・アス」 マシュー・ボーン監督
9月16日(木) したまちコメディ映画祭in台東 前夜祭「映画秘宝まつり」で鑑賞

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今回は感想というより、行ってきましたの報告になっちゃったっす。すんません。

そもそも平日なのに開場17時の開映17時30分なんてまともな会社員では鑑賞するのが絶対無理な時間設定。これに参加している時点でまったく社会に適合していない大人だということが決定してしまうわけですが、会場は満員。チケットは当日券も含めて売り切れだったそうです。

というわけで満を持しての「キック・アス」。本当に楽しい映画体験でしたよ。原作がアメコミ、そしてアメコミへのオマージュ溢れる遊び心の数々。やっぱり誰もが思う「ヒット・ガール」が最高ですね。11歳の小さな女の子が大人を殺しまくるんですが、その姿と躍動感に惚れ惚れしちゃいました。ニコラス・ケイジがまるでバットマンのように動きまわるんですが、これも見所です。もちろんタイトルになってる「キック・アス」もクライマックスで大活躍しますよ。これがまた面白くて……って何を書いてもネタバレになっちゃうなあ。公開は12月だし、詳しくは劇場公開後にもう1度見たときに書きますね。ホントに楽しかったなー。

会場もいい雰囲気で、笑い声も響いていたし、クライマックスでは拍手が起きました。もちろん僕も声を出して笑って、手を叩きました

映画上映後は町山智浩さんと水道橋博士による「フ◯ック・アス」が。博士の水野晴郎に対する愛情に溢れた映像はお口あんぐりの予想外の展開でした。

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会場にはいつも聞いてるキラキラから花が届いていました。パチリ。

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映画「姿三四郎」

「姿三四郎」 黒澤明監督
9月11日(土)シネマブルースタジオにて1000円で鑑賞

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「黒澤明生誕100年記念上映」は2回目の鑑賞です。今回は黒澤監督のデビュー作である「姿三四郎」。1943年(昭和18年)の作品。

ここのでっかいスクリーンで見ると映画を見たというより体感したと感じてしまいます。今回も感想は同じで、体感しました。

なにせ古い映画ですので役者さんの台詞が聞き取りにくいという欠点があります。さらに、戦時下の検閲にあったため18分もフィルムがカットされたという経緯があり、少し物語の全体像がぼやけてしまっています。でもきちんと作品が楽しめたというのは黒澤監督が圧倒的に「画」を重視する人だからなんでしょうね。

台詞が多少聞こえなくても画面を見ていれば分かるんですよ。そもそも有名な池のシーンなどは台詞ではなく蓮の花が開くことで、三四郎の心情を表現しちゃっているわけですしね。

クライマックスの決闘シーンで強風に大きく揺れ動く草木の表現。今なら機械で風を送って撮影するんでしょうが、自然の強風で撮影したというんだから、そりゃあ迫力も出るはずです。「画」の力強さはデビュー作から健在だったんですね。

シネマブルースタジオでの「黒澤明生誕100年記念上映」は来年の2月まで続きますよ。あんまり人が入ってなくて悲しいから、僕はなるべく行くようにします。

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今週は「蜘蛛巣城」、来週は「どん底」が上映されます。黒澤監督の映画をスクリーンで見たことがない人はこの機会にぜひぜひ。DVDやブルーレイで見るのとでは全然違いますから。

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2010年9月15日 (水)

映画「ヒックとドラゴン」2回目

映画「ヒックとドラゴン」 ディーン・デュボア クリス・サンダース監督

9月11日(土) 3D吹替版をシネマイレージカードのポイントが貯まったので無料で鑑賞

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前回は間違えて2D版で見てしまったので、上映が終わっちゃう前に3D版で見直しました。前回の感想はこちら。結果、見直して大正解。人物の奥行きをあんなに綺麗に表現していたなんてビックリでした。もちろん飛行シーンも素晴らしかった。背景にくっきりと浮かび上がるヒックとトゥース、ゾクゾクしました。

もちろん3Dで見たほうがいいけど、僕が2D版を見て受けた感動は間違っていないわけで、だから名画座などで2Dで見ても感動できるはずです。ただスクリーンで見ないと飛行シーンの凄さは体験できないですよ。

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映画「カラフル」

「カラフル」 原恵一監督
9月10日(金) 鑑賞券にて1300円で鑑賞

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死んでしまった少年が抽選に当たったために、もう一度外界に戻って生き直すチャンスをもらう。そして自殺したばかりの中3男子の体に入り込むことになるが、生き直すためには自分の犯した罪を思い出さなきゃならないというのが、物語の始まり。

詳しいストーリーは公式サイトを参照してね

自殺、イジメ、援助交際、不倫、進路問題、家族の不和など確かに描かれるのは見事に伊集院光がラジオで言っていたとおり「中学生日記」の世界でした。

結局、思春期特有のコミュニケーション不全の話で、まあ、15歳というのはそういう時期でありますし、一つの絶望や一つの悲しみが世界の終わりに感じてしまうのもわかります。イジメという要素はあったにせよ、そういうものは本来なら年を重ねていくごとに解決していくものなんですよね。

というか無人島で生きている人でない限り、人間の行動はすべて他者との関わり合いでしか成立しないわけです。僕たちはその関わり合いを通じて悲しみを経験し、喜びを得て、絶望感に呆然としながらも成長していくわけです。

今作の主人公は15歳の小林真として生き直すことによって、人と人の関わり合いの多様性に気付くんですね。そして自分と他者の立場を置き換えることによって、眼に見える世界が幾重にも変化することを理解するのです。これがタイトルの「カラフル」の意味なんでしょうね。

やっとできた友達、早乙女くんと巡る玉電のシークエンスは珍しく久しぶりに日本映画で良い風景を見ました。僕が最近見た日本映画に映し出される風景は郊外の孤独ばかりだったので、アニメとはいえ楽しい気分に浸れました。

早乙女くん関連のエピソードは全て良かった。美術部のメガネっ子との交流も良かった。援交女子のあっけらかんぶりも好感が持てた。だけど、他の部分、特に家族に関する描き方は全部嫌いです。

原作があるからしょうがないんでしょうが、父親の描き方も嫌いだし、母親をとことんイジメ尽くすシナリオも大嫌い。シナリオ的に母親をイジメればイジメるほど最後にパンチが効くのは理解しているんですけどね。

特に嫌なのが食事や料理を通して母親への嫌悪感を表現するというところ。実際、これぞ思春期!という感じで効果的に描けていたし、ここを褒める人もいるんだけど、僕にとって料理をするシーンや食事をするシーンは映画を見る上で聖域なわけで、ここを汚されるとそれだけでNGなんですよ。

「かもめ食堂」という気持ち悪い映画がありましたが、気持ち悪さを差し引いても僕にとって大傑作になるのは料理と食事という僕にとっての聖域を美しく描いてくれたからなんです。そんなわけでテーマやドラマ的な部分の素晴らしさを評価しつつも、僕はこの映画をまったく支持できないのでありました。映画の見方は人それぞれなんですよね。

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2010年9月 2日 (木)

映画「悪人」

悪人」 李相日監督
9月1日(水) 試写会で鑑賞

無料で見せてもらった映画についてあれこれ言うのは気が引けるので報告だけにしておこうっと。心に突き刺さる重たい重たい映画でした。出演者すべての演技が素晴らしく、バス運転手役のモロ師岡さんまで印象に残る演技をしていました。また北九州の田舎の風景にガツンとやられました。ヒーローショーとかサイタマノラッパーもそうでしたが地方の国道沿いの風景って孤独を際立てさせますね。一つわからなかったことがあって、なんでイカの目にズーミングしたんだろう?原作と関係あるのかな。

※ツイッターでつぶやいたことを追記

・井筒監督の「ヒーローショー」の脚本陣は「悪人」の原作を読んでいたに違いなく、そしてかなりのインスパイアを受けたんだろうなということ。一見異なる映画に見えるけど類似点が多くて色々考えるのが楽しくて〜。

・でも笑っちゃうのは映画「ヒーローショー」と「悪人」とを繋ぐのは日産車だということ。片やシルビア、片やGTR。田舎とか郊外を表現するのに軽自動車以外では日産車がやたら似合う。孤独なんだからエルグランドなんてあり得ないのだ。

・でもそういう地方とか郊外の閉塞感とか孤独は昔から日本映画では描かれていてそんなに珍しいものではないよね。それはピンク映画やロマンポルノで見ることができた。たとえば赫い髪の女とか、瀬々監督の雷魚とか。

・映画「悪人」でぐっときたシーンがあって、それはネタバレじゃないから書くけど、出会ってすぐにラブホで抱き合う二人で。あの抱きしめ方、抱きしめられ方はもう自分の経験反映してしまって震えたです。普段一人で寝たり起きたりしている人は人の重み(つまり重量)を求めるんだよ。

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2010年9月 1日 (水)

映画「BECK」

「BECK」 堤幸彦監督
8月30日(月) 試写会にて鑑賞

無料で見せてもらった映画について罵詈雑言を吐くのは本当に気がひけるので、罵詈雑言はミクシィで吐き出しました。そんなわけでここでは見終わった直後にツイッターにつぶやいたことを再掲して終了。

「BECK試写会終了。久しぶりにトンデモ映画見ました~(笑)こんなことになるなら映画化しなけりゃ良かったのに~」

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映画「ペルシャ猫を誰も知らない」

ペルシャ猫を誰も知らない」 バフマン・ゴバディ監督
8月28日(土) 鑑賞券により1400円で鑑賞

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イラン映画です。1979年のイスラム革命以降、イランでは西洋的文化が規制されているんですが、それでもアンダーグラウンドで音楽を続ける若者たちの姿をゲリラ撮影した作品です。

しかしですね、実はですね、映画の冒頭から強烈な眠気に襲われてしまってですね、コックリ、コックリ居眠りしちゃったんですよ。いや、これは映画がつまらなかったというわけではまったくなくて、理由を分析するに上映館のユーロスペースに来る前に北千住で162分もある「乱」を見ていたし、その後、そば屋でビール飲んじゃったし、しかも強烈な暑さの中、汗を大量にかきながら会場まで歩いてきたし。そしたら劇場は冷房のおかげで涼しくて最高に過ごしやすいし……で居眠りです。完全には寝てません。落ちる、ハッとする、落ちる、ハッとするの繰り返しって感じ。

そんなわけで居眠り野郎が偉そうに感想なんか書くのはこの映画に対して失礼にあたりますから、今回は簡単に箇条書きで。

・本当の国名がイラン・イスラム共和国であるように宗教が政治や法律のすべての元になってる国だから、まあ本当に居心地が悪く生きづらい国だということに驚愕

・酒を飲んだだけで大騒ぎになって死人まででちゃうんだから酒飲みの僕には到底生きていいけない国

・だというのに若者たちは様々な西洋的な音楽を苦労しながらも続けている姿に共感。メタルもヒップホップもあるし、ストロークスのTシャツを来ている青年もいたよ。

・アイスランドに行きたいと主役の子がいう、もちろんシガー・ロスの国だから。イランのアンダーグラウンドでもシガー・ロスは大人気。同じ足立区のシガー・ロス好きのオヤジとテヘランの若者が映画の中でがっちり共感

・テヘランの町がとても近代的なのもびっくり。そりゃそうだ世界第2の産油国だもの

映画を見ながら居眠りをしてしまったのは2006年の「父親たちの星条旗」以来4年ぶりです。体調管理は大事だな〜と痛感しました。しっかりしろ自分。

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