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2010年8月

2010年8月31日 (火)

映画「乱」

「乱」 黒澤明監督
8月28日(土)シネマブルースタジオにて1000円で鑑賞

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今月から地元北千住の東京芸術センターで特集上映「黒澤明 生誕100年記念 23作品一挙上映」が始まっています。このシネマブルースタジオというのは撮影スタジオを利用した映画館で、本来スタジオですから天井の高さが10メートルもあります。その高さを利用したスクリーンは巨大で最近のシネコンではあり得ないサイズです。TOHOシネマズ日劇も大きいですがそれに匹敵するほどです。そしてその巨大スクリーンで見た「乱」は「映画を体験した」という喜びに満ちたものになりました。

この映画は1985年の作品。その昔見た時は若すぎたこともあって、この映画をほとんど楽しめませんでした。原作がシェークスピアのリア王だということは知っていましたが、「それがどうした、映画は見れば分かるんだ」という考え方だったのでしょう、原作との関連性を楽しむこともできませんでした。

そんなわけで今回は事前にシェークスピアのリア王を読んでから映画に臨みました。これが良かった。リア王の物語を知っていて映画を見たら楽しみが倍増しました。

黒澤監督がどのようにリア王を翻案したのかを見るのも楽しかったし、そしてそれがパズルのように見事にはまっていたことも楽しめました。そもそもリア王の物語を分かっていないとピーターの道化の役どころが不可解ですもんね。さらに、以前見たときは退屈なだけだった狂った後の景虎のシークエンスでは、仲代達矢の演技者としての凄さも伝わってきました。

そして映像のスケールの大きさや色彩の華麗さも堪能です。やっぱり次男の赤の戦装束は映えます。そして、なんといっても合戦シーンが凄かった。物凄い数の足軽たち、騎馬隊の迫力、CGではなく全てリアルな人間がうごめいている。大興奮してしまいました。大スクリーン最高!やっぱり劇場で見るのが好き!となぜか、この劇場にときめいちゃってましたよ。

翌日に録画してあった今作をテレビで見なおしたんですが、ハイビジョンで見るとさらに分かるんですよ彩りの楽しさや衣装の面白さが。提案としては大スクリーンで興奮を味わって、ハイビジョンで色の華麗さを再認識するという見方がいいかも。

ブルースタジオで始まった黒澤明の特集上映はまだまだ始まったばかり。「隠し砦の三悪人」をあの大スクリーンで見たみたいな〜。というより残り全部見たい。あの大スクリーンは他にはかえがたいです。

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2010年8月23日 (月)

映画「ルンバ/アイスバーグ」

ルンバ/アイスバーグ
ドミニク・アベル、フィオナ・ゴードン、ブルーノ・ロミ監督

8月17日(火) シネマイレージデイだったため1300円で鑑賞

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詳しいストーリーなどは公式サイトを参照してね

ベルギー映画。主演と監督も務めている2人は夫婦で道化師をしているそうです。公式サイトのインタビューを読んでみると僕なんかが想像しがちなサーカスのピエロとは違うみたいですね。

2作とも極力台詞を抑えて身体表現だけで物語を紡いでいきます。主演の2人とも手足がスラッと長いから表現が大袈裟に見えて可笑しいんですよ。つまり道化師というのは言葉を使わずにボディランゲージだけで人を笑わせるという職業なのでしょう。そしてそれをそのまま映画の表現手段としてつかったのが本作なんでしょうね。

身体表現だけで笑わせるというのは映画の原点であるサイレントムービーに通じるところがあって、確かにチャプリン(偶然週末に姪っ子と見たんです)やキートンの作品を思い出させます。また海岸や海水浴場が舞台だったりするので、ジャック・タチを感じたりしました。その辺は当然意識しているんでしょうね。

美男美女ではないし一見地味に見えるルックスの主役の2人なのですが、衣装や美術に原色を大胆に使っているため、2作ともカラフルでポップな雰囲気の作品に仕上がっています。これは日本映画も見習えますね。主役が地味だったら衣装と美術で冒険するという。

「アイスバーグ」はスピルバーグの「未知との遭遇」をモチーフにした作品で、ある時職場の冷凍室に一晩閉じ込められてしまった奥さんが、氷への愛に目覚めて家族を捨ててアイスバーグ(氷山)を目指す旅に出るという話。テーマが明確だっただけに、僕はこっちの方が面白く見られました。

もう1本の「ルンバ」は、ダンスコンテストで優勝したカップルが交通事故に遭遇して、女性は片足を無くし、男性は記憶喪失になってしまうという悲喜劇。こちらも面白かったのですが、記憶喪失ゆえのドタバタと、片足ゆえのドタバタという笑いのツボの部分が少し見ていてくどかったかな。

どちらの作品もパートナーのアイデンティティの消失を巡る映画になっていて、ただの喜劇に終わらせていないところがさすがだと思いました。

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2010年8月20日 (金)

映画「インセプション」

「インセプション」 クリストファー・ノーラン監督
8月14日(土)TOHOシネマズデーのため1000円で鑑賞

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詳しいストーリーは公式サイトを参照してね

実は事前に町山智浩さんがロフトプラスワンでやったイベントをUstream中継で見ちゃったんですよ。普段はなるべく見に行く予定の映画の情報は遮断するようにしているのですが、この中継で町山さんは映画の内容や町山さんの解釈などを話されていて、そしてそれがとっても面白くて、劇場に足を運ぶ前にお腹いっぱいになっちゃってました。おまけに、そのイベントで町山さんが語っていたことを自分なりに予習しておこうと、ベルトリッチの「ラストタンゴ・イン・パリ」を見たり、フランシス・ベーコンの絵画をネットで確認したりと、なんつうか、もう、普段の僕の映画鑑賞のスタイルとは180度異なる感じで、そんなわけでここで僕が感想を書いてもすべて町山さんの二番煎じになりそうで怖いので、今回はパスします。腑抜けですみません。

そのイベントの内容の要約をアップしてくれている人がいるのでリンクをはっておきますね。しかし、あの場面を見て「ラストタンゴ・イン・パリ」を思い出した町山さんは凄すぎます。あり得ない。そして産業スパイの部分はマクガフィンであると言い切っちゃう格好良さ。改めてリスペクトです。

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2010年8月19日 (木)

映画「ベスト・キッド」

ベスト・キッド」 ハラルド・ズワルト監督
8月14日(土)日本語吹き替え版をTOHOシネマズデーのため1000円で鑑賞

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言わずと知れた超有名作のリメイク版。ウィル・スミスの息子が主役で、旧作ではパット・モリタが演じた空手の師匠役がジャッキー・チェンという不思議な配役。

老け役のジャッキーが心配だったけれど、それは杞憂でした。ちゃんとアクション的見せ場もあったし、くたびれた初老の男性をしっかり演じきっていました。あのジャッキーがペーソス溢れる演技なんてびっくりですよね。

一方のジェイデン・スミス君。カンフーは頑張った。演技も問題ない。でもいかんせんまだ子供なんですよね。体のパーツすべてがスリムすぎて、アクションのキレは抜群でも技の一つひとつに力強さや重さが感じられませんでした。惜しい。撮影当時12歳。体が出来上がるまでもう2〜3年待ってなかったのかな。

そして問題は上映時間。140分はいくらなんでも長過ぎ。中国ロケだから頑張ってしまったのかな。全体的にテンポが悪く感じてしまいました。

ちょっと辛口のコメントをしてしまったけれど、それでも映画自体は楽しめましたよ。

余計なお世話でしょうけど原題が「The Karate Kid」なんですよね。でも劇中で行われる競技はカンフーなんですよ。邦題は「ベスト・キッド」だから良いにしても、海外の人は空手とカンフーを誤解しちゃうんじゃないかな。

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2010年8月18日 (水)

映画「ヒックとドラゴン」

ヒックとドラゴン」 ディーン・デュボア クリス・サンダース監督

8月14日(土) 2D日本語吹き替え版をTOHOシネマズデーのため1000円で観賞

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とても良い映画を見たなーと感慨にふけっていたら、エンドクレジットで予期せぬヨンシーの歌声。え、え、本当にヨンシーかよとクレジットじっと凝視してると確かにヨンシーとあり満足感がさらに倍になりました。

今作、ぼくは残念ながら2D版で見てしまったんだけど、それでも十分過ぎるほど大満足が得られました。今年の夏はたくさん映画を見たけど、この「ヒックとドラゴン」が一番楽しめました。

詳しいストーリーは公式サイトを参照してね

バイキングたちには厳しい天候とは別に天敵がいてそれがドラゴン。ドラゴンは村人たちの食糧を狙って襲撃にやってきます。そして村人たちにとってはドラゴンを倒すことが一人前の証となります。主人公のヒックは見た目通りのひ弱な男の子で、父親からもドラゴン退治には参加しなくて良いと言われています。

この親子関係が面白くて、ヒックは野蛮な父が嫌いではないからなんとか親の期待に応えようとします。父もヒックのひ弱さを否定しつつも子供としては愛しています。この感情を台詞ではなくて、表情の変化で表現していました。最近の3Dアニメの進化にはびっくりです。

飛べなくなったドラゴンとヒックが分かり合うまでの過程もきちんと描かれていて、まさに相棒が誕生した瞬間の飛行シーンは涙が出そうになりました。何度もある飛行シーンですが、2Dで見てもその爽快感は素晴らしかった。大きなスクリーンでこそ得られる体感に大満足。3Dで見直したいと思いました。

ここからネタバレ

ドラゴンがバイキングの村を襲う理由というのが、より強力なボスキャラの食料調達のためで、実はボスキャラ以外のドラゴンたちは人間と共生することができます。巨大な権力の元で仕方なく人間と戦わなければならないドラゴンたちという設定は、自ずと現代の世界情勢に当てはめることができて、あの国のこととか、あの宗教にしばられているグループとかが想起できますね。同じようにバイキングたちの力こそが全てという思想も現代社会に当てはめることができて、それはつまりは古臭い思想であり変わらなければならないわけです。

そしてヒックは飛べないドラゴンと心を通い合わせながら、ボスキャラを倒すことによって、ドラゴンたちを解放した上にバイキングたちの思想さえも変えることに成功してまうわけです。

そしてラストは今までのアニメ作品では考えられないような結末が描かれるのですが、僕は肯定しようと思います。それはヒックとドラゴンが真に掛け替えのない存在になったわけで、悲惨な将来を予見できることなど思い浮かばないからです。

本当は3D版見てから感想を書こうと思ったんだけど、見られるか見られないかが五分五分な感じになってしまったので、2D版だけでの感想になってしまいました。

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2010年8月16日 (月)

映画「ぼくのエリ 200歳の少女」

ぼくのエリ 200歳の少女」 トーマス・アルフレッドソン監督
8月11日、サービスデーなので1000円で鑑賞

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脚本、演出、役者の演技、すべてが素晴らしい見応えのある作品でした。

いじめられっ子12歳のオスカーとアパートの隣に引越してきた少女に見えるエリとの恋物語。しかしエリが実はヴァンパイアだったという話。詳しくは公式ホームページを参照してね。

暗闇の中をとろけそうな雪が舞っているオープニング、これが僕にはスノードームを撮影しているように感じられました。物語はスノードームのような閉ざされた空間の中で語られていくという暗示はあながち間違いではなかったことが後にわかります。

12歳にしてかけがえの無い存在であるエリと出会ってしまったオスカー。その描写が丁寧でそして説明的ではなくあくまで映画的手法を使って表現していく。惚れ惚れとしてしまいました。

そして誰もが感じる「小さな恋のメロディ」風のラストシーンが素敵でした。2人の未来はどうなるのだろう? オスカーもあのオジサンのようになってしまうのかな? そんなことを僕も想像してしまいました。そうさせてしまう時点でこの映画は僕の心をつかんでいるわけで、監督の大勝利だと思います。

原作小説のタイトルは「モールス」。モールス信号のモールス。隣同士に住む2人は壁越しにモールス信号で会話をするのです。このモールス信号は素敵なラストシーンの味わいに活きてくるのです。

さらにこの映画の磁力は自分がかけがえの無い存在に出会ってしまった時に、オスカーのような行動が取れるかな?という自問自答さえ呼び起こしました。そんなことを詳しく書くと自伝小説になってしまうので端折りますが、もう一度見るときは、そんな視点から見直すのも面白いんじゃないかな。

そうそう肝心なところでボカシが入ってしまうんだけど、そのボカシ部分になにがあったのかをツイッターでたずねたところ、フォロワーさんたちが教えてくれて、とっても嬉しかった。ツイッター悪くないなぁと思った瞬間でもありました。

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2010年8月 6日 (金)

映画「小さな命が呼ぶとき」

小さな命が呼ぶとき」 トム・ヴォーン監督
8月4日(水) 鑑賞券にて1500円で鑑賞。

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ポンペ病という筋ジストロフィーの一種である病気にかかった子供を助けるため、ブレンダン・フレイザー演じる父親とハリソン・フォード演じる博士が新薬づくりを目指すというストーリー。実話だそうです。

ごく一般的な難病モノ映画とは大きく異なり、主役は病気の子供ではなく、あくまでも新薬開発を目指す大人2人。前半はいかに研究開発資金を集めるかが描かれ、これがなかなか面白かったです。自分たちで製薬会社を作るためにファンドに掛け合ったり、その資金が尽きかけると、会社ごと身売りして研究を続けたりと。でもそのたびに契約内容がシビアになって、アメリカのビジネスってのは発達しているんですけど、とてもドライで容赦がないんですね。

中盤の2人の大人の軋轢や最後の大逆転など映画的な面白味もあって楽しめました。ただ一つ残念だったのが、ビジネス面に焦点を当てすぎたせいか、肝心の新薬の開発場面が詳しく描かれなかったところ。せめてアイアンマンのガジェット作りくらいの見せ場は入れてほしかったです。

それから病気の子供たちの描写が素晴らしかったです。病気だからといって内面は年齢と共に成長しているわけだから、年相応に小生意気にもなるし、でも、その小生意気さが可愛くて可愛くて。

もう一つ面白かったのはハリソン・フォードが研究室のオーディオで流している音楽がグレイトフル・デッドの「トラッキン」、ジェイムスギャングの「ファンク#49」、ザ・バンドの「ウエイト」だったり。つまりヒッピー世代の研究者ということなんでしょうね。

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2010年8月 4日 (水)

映画「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」

「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」ハル・アシュビー監督
7月23日(金)新宿にて鑑賞

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フジロックに行ってきたりなんだりで、見てから随分たってからの感想のアップです。

本作と一つ前に感想をアップした「バード★シット」が、ZIGGY FILMS '70sとしてニュープリントで公開されました。どちらの映画も随分前から評判を聞いていたので、今回の公開は本当に嬉しかったです。

監督のハル・アシュビーという人はアメリカンニューシネマの監督として有名だそうですが、僕にとってはローリング・ストーンズの映画「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー 」の監督として強く心に刻まれている人です。フィルモグラフィーを見てみてもタイトルは知っているけれど見たことがない映画が多いです。やっぱり僕にとってはストーンズの映画を撮った人なんです。

さて「ハロルドとモード」です。19歳の少年が79歳のお婆ちゃんと恋に落ちるというのが今作のストーリー。

家庭が裕福なので学校に行くわけでもなく、仕事をするわけでもなく毎日ぼんやり暮らしている少年ハロルド。趣味が狂言自殺という点も生きることに何の楽しみも見出すことが出来ない彼の心を表しています。つまり19歳にして生きることに絶望しているのです。

一方79歳のお婆ちゃんは驚くほど自由奔放に生きています。その自由さは一種の奇行にも見えます。しかし、彼女の腕にあるタトゥーがチラッと見えたとき、それは彼女の過酷な人生の裏返しなのだということが分かります。

腕に刻まれたランダムな数字のタトゥーは彼女がユダヤ人の収容所からの生還者だということを示しているのでしょう。ヨーロッパの過酷な状況から生き残り、アメリカに渡ってきた彼女は、人生を楽しむことに決めたに違いありません。

そして、このモードお婆ちゃんと出会ったハロルドは生きることの楽しさを学びます。「毎日一つだけでいいから新しいことを始めるのよ」は正に金言で、それを実行するだけでただダラダラと流れていく日常が新鮮なものになるはずです。

枯れそうな街路樹を引きぬいて、森に植え直すというエピソード。これなんかは紛れもなく死にとりつかれたハロルドが、枯れ木と同じように再生するという暗喩なのです。

二人は恋人同士のような関係になり、ハロルドは母親にモードと結婚するとまで宣言します。しかし、物語は皮肉な終わり方をします。その終わり方は生きることに楽しみを見出したハロルドが、もうモードがいなくても人生を歩いていけるように成長したのだと僕は感じました。

物語全体がキャット・スティーブンスの音楽によって導かれていくのがとても良かった。この手法が誰かに似ていると思ったのですが、Wikipediaを見て納得しました。引用します、
「キャメロン・クロウは、自身が所有するレコード会社Vinyl Film Recordから2007年12月に2500枚限定でサントラ版を発売した」

そう、キャメロン・クロウ監督の匂いがしました。なるほどなあと感心してしまいました。

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